危篤とは?介護職員の対応|死の三大兆候・家族や医師を呼ぶタイミング

危篤。介護現場で働く職員にとって、入所者の最期に立ち会う場面は決して慣れるものではありません。緊張と不安の中で、どのように判断し、どんな対応をすべきか。この記事では、危篤の兆候と死の三大兆候、家族や医師を呼ぶタイミング、そして介護職員ができるケアのポイントを、現場目線で詳しく解説します。
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危篤とは?その意味と判断の難しさ
危篤とは、回復の見込みがなく、今にも亡くなる可能性が高い状態を指します。医学的には、「死期が切迫している状態」と表現されることもあります。
しかし、実際の現場では「危篤かどうか」を一瞬で判断するのは簡単ではありません。血圧や脈拍、呼吸の変化、尿量の減少、皮膚の色、意識レベル――こうした複数のサインを総合的に見て判断します。
観察ポイント
血圧:測定できないほど低下する
脈拍:速く弱くなり、だんだん触れにくくなる
呼吸:チェーンストークス呼吸、死前喘鳴、肩呼吸(努力呼吸)、下顎呼吸があらわれる
尿量:極端に減る、ほとんど出なくなる
皮膚:皮膚や爪が紫色になり、手足に触れると冷たい(冷感)
意識レベル:呼びかけに反応しない
その他:肛門が弛緩し便が出てくる など
これらの兆候が見られると、おおむね24時間以内に死が訪れるとされていますが、もっと短い時間で死に至る場合や、反対に数日続く場合もあります。家族には、時間的な予測が難しいことも含めて、これらの兆候について事前に情報提供しておくことが重要です。
危篤は、医師が患者の呼吸や心拍、血圧などの生命徴候の著しい低下、意識レベルの低下などから総合的に判断します。明確な医学的基準があるわけではなく、あくまで担当医師による判断です。
例えば、血圧が測定できないほど下がり、脈拍が弱く触れにくくなる。呼吸は浅く不規則になり、チェーンストークス呼吸や下顎呼吸が見られる。尿量はほとんど出なくなり、皮膚は紫色に変化し、手足が冷たくなる。そして、呼びかけに反応しない――
こうした変化が重なったとき、危篤の可能性が高いと考えられます。
| 呼吸名 | 状態 |
|---|---|
| チェーンストークス呼吸 | 10秒から30秒ほど呼吸が止まり、その後、浅い呼吸が始まり、徐々に深い呼吸に変わるサイクルを繰り返す |
| 死前喘鳴 | 呼吸のたびに喉の奥で「ゼロゼロ」「ヒューヒュー」という音がする |
| 肩呼吸(努力呼吸) | 呼吸の際に肩を大きく動かし、呼吸を頑張っているように見える状態 |
| 下顎呼吸 | 下顎だけを動かして呼吸する状態 |
危篤状態の継続期間と小康状態
また、危篤状態がどれくらい続くかは、その方の体力や基礎疾患によって大きく異なります。一般的な目安としては次のようなケースがあります。
• 数時間で亡くなってしまうケース:急性の重篤な状態(例:重度の脳出血、広範囲の心筋梗塞など)
• 1〜3日程度危篤状態が続くケース:多くの終末期患者に見られる一般的なパターン
• 1週間以上危篤状態が続くケース:体力のある方や、一時的に小康状態に戻る場合
中には、危篤宣告後に一時的に回復し、小康状態に戻る方もいます。しかし、多くの場合、危篤宣告から数日以内に亡くなることが一般的です。
小康状態とは、症状が一時的に落ち着いている状態を指します。完全に回復したわけではなく、再び悪化する可能性がある点に注意が必要です。
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危篤時に介護職員がすべきこと
危篤状態を察知した瞬間、現場は緊張します。しかし、最も大切なのは冷静さです。まずは状態を観察し、記録します。血圧や脈拍、呼吸のパターン、尿量、皮膚の色、意識レベル――これらを正確に把握し、医療職や家族に客観的に伝えることが求められます。
同時に、本人が穏やかに過ごせる環境を整えることも忘れてはいけません。照明を落とし、騒音を減らし、静かな空間を作る。そして、危篤だからといって触れてはいけないわけではありません。やさしく声をかけ、手足をさすってあげることは、本人にとっても、家族にとっても大きな安心につながります。
利用者の状態は一見落ち着いていても、急にバイタルサインが悪化し、そのまま看取りとなる場合があります。また、呼吸状態の悪化が長く続くケースもあり、状況は予測が難しいものです。付き添い期間が長引くと、家族の心身に疲労が蓄積していきます。だからこそ、利用者だけでなく家族にも気を配り、安心できる環境づくりが欠かせません。
看取りの場としては、個室や静養室の利用が望ましいとされています。しかし、中には「慣れ親しんだ部屋で最期を迎えたい」と希望する入所者もいます。その場合は、できる限り意向を尊重し、家族に十分説明したうえで、関係部署と調整を行いましょう。ただし、施設の構造や他の入所者への配慮から、対応が難しい場合もあります。無理のない範囲で、最善の方法を検討し、利用者と家族に寄り添った看取りを目指しましょう。
家族を呼ぶタイミングと声かけ
「いつ連絡すべきか」は、介護職員にとって難しい判断です。基本的には、回復の見込みがないと判断されたとき、急変したとき、危篤の兆候が現れたときが目安です。ただし、家族の希望も尊重しましょう。
声かけは、できるだけ具体的で、安心感を与える言葉を選びます。
「呼吸や血圧に大きな変化があり、危篤の兆候が見られます。できるだけ早くお越しください。」
「状態が落ち着いているように見えても、急変する可能性がありますので、立ち会えるようご準備ください。」
危篤から亡くなるまでの時間は人によって異なります。数時間で亡くなる場合もあれば、数日続くこともあります。家族にはその点を事前に説明し、「死に目に会えなかった」ことで後悔しないよう配慮します。
医師を呼ぶタイミングと施設のルール
医師を呼ぶタイミングは、施設ごとにマニュアル化しておくことが重要です。危篤兆候が現れたとき、呼吸停止を確認したとき、急変時など、どのような場面で誰がどのように連絡するのかを文章化、フロー図化しておく必要があります。
また、介護職員や看護職員、医師などの配置状況に応じて、日中・夜間・休日ごとの連絡方法を具体的に定めることが求められます。こうしたルールを事前に共有しておくことで、緊急時の対応が迅速かつ適切になります。
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まとめ
危篤とは、回復の見込みがなく、死期が迫っている状態を指します。しかし、その判断は非常に難しく、血圧・脈拍・呼吸・尿量・皮膚の色・意識レベルなど複数の兆候を総合的に見て判断する必要があります。一般的には、こうした変化が重なった場合、24時間以内に亡くなる可能性が高いとされますが、時間の予測は困難です。
介護現場で重要なのは、冷静な観察と記録、そして迅速な情報共有です。医療職や家族に正確な状態を伝えるとともに、本人が穏やかに過ごせる環境を整えることが求められます。
施設内での医師への連絡体制や対応フローを事前に整備しておくことが、緊急時の混乱を防ぐためにも重要です。


