ユニットケアの魅力とは?高齢者に安心の少人数制ケア

高齢者が安心して暮らせる環境を提供するために、ユニットケアが注目されています。少人数制のケアは、家庭的な雰囲気を大切にしながら、個別のニーズに応じたきめ細やかなサポートを実現します。本記事では、ユニットケアの魅力やメリット、従来型との違い、そして導入事例について詳しくご紹介します。ユニットケアの導入を検討されている方や、介護に関心のある方にとって、役立つ情報が満載です。
「ユニットケア」とは
ユニットケアは、高齢者や介護が必要な方々が「家庭的な環境」で生活できるように設計された介護施設の運営方式です。入居者を少人数のグループ(ユニット)に分け、それぞれが家庭的な空間で個別のケアを受けられることを目指します。この仕組みにより、入居者が自分らしく過ごせるだけでなく、職員もよりきめ細やかなケアを提供しやすくなるメリットがあります。
1. 少人数制(家庭的な環境の実現)
ユニットケアでは1ユニットを5~10人程度に設定し、居室のほか共有スペース(リビングやキッチン)が設けられています。この環境は一般的な自宅での暮らしに近く、家庭的な雰囲気を大切にすることで入居者が安心感を得られます。
2. 個別ケアの実現
少人数制により、職員が入居者一人ひとりの健康状態や性格、生活習慣を深く理解しやすくなります。それにより、入居者に合わせた柔軟なケアプランが実現可能です。職員は基本的に専任されるため、利用者との信頼関係の構築や関係性の向上にも繋がります。
3. プライバシーの確保
各入居者には個室が用意されるため、プライバシーが守られます。これにより、入居者が自分のペースで生活を楽しむことができ、ストレス軽減にもつながります。
ユニットケア型と従来型の違い
ユニットケア型、いわゆるユニット型は従来型の施設構造の面で大きく異なります。 以下の表は比較の図です。
ユニット型は、共有スペースを囲うように個室が並んでいます。
従来型でも個室はありますが、特徴的なのは共有スペースがある点です。個室が小グループを形成し、段階的な共有スペースが複数あることで交流が生まれ、ユニット型の強みを発揮します。 ユニット型の場合は、各ユニットに共有スペース内にキッチンや食堂、リビングなどがあり共同生活を送ります。

「ユニット型=完全な個室」と思われがちですが、実は「ユニット型個室的多床室」という形態も存在します。これは以前「ユニット型準個室」と呼ばれていたもので、現在は「ユニット型個室的多床室」という名称に統一されています。
このタイプの居室は、パーテーションなどで空間を仕切ることで、見た目や使い勝手は個室に近いものとなっています。ただし、天井と壁の間に一定の隙間がある構造のため、音やにおいが完全に遮断されるわけではなく、完全な個室ほどのプライバシーは確保できません。
また、家具などの可動式の仕切りは使用できず、各居室には窓の設置が必要です。
「ユニット型個室的多床室」は、令和3年の介護報酬改定により、新たに設置することが禁止されました。感染症対策やプライバシー保護の観点から、より個室化を進める方針が取られたためです。現在では、既存の施設に限ってこのタイプの居室が見られることがあります。
参照元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

多多床室から個室のユニット型へ建て替えを行った施設の入所者・介護スタッフの変化を測定した厚生労働省の資料があります。結果は以下のようになりました。
特別養護老人ホームの建て替えによる入所者・介護スタッフの変化
項目 | 従来型 | ユニットケア型 |
ベッド上の滞在率 | 67.7% | 40.2% |
リビングの滞在率 | 16.7% | 42.8% |
日中に占める睡眠時間 | 42.3% | 22.5% |
日中に占める食事時間 | 7.6% | 11.3% |
1人あたりの食事時間 | 1,463kcal | 1,580kcal |
ポータブルトイレ設備台数 | 29台 | 14台 |
介護スタッフの行動の変化
項目 | 従来型 | ユニットケア型 |
居室の滞在率 | 39.2% | 18.0% |
廊下の滞在率 | 9.2% | 4.9% |
リビングの滞在率 | 9.4% | 37.5% |
直接介助の時間 | 46.2% | 33.1% |
余暇・交流の時間 | 20.3% | 24.1% |
個室化を進めた結果、入居者の生活にさまざまな良い変化が見られました。まず、ベッド上で過ごす時間が減り、リビングで過ごす時間が増加。これは、個室化によってかえって共有スペースへの移動が促され、他の入居者との交流が活発になったことを示しています。
さらに、一人あたりの食事量が増えたほか、排泄面でもポータブルトイレの設置台数が減少するなど、生活の質が全体的に向上しました。これらの変化は、入居者の自立支援につながるだけでなく、介護職員の負担軽減にも寄与していることが分かっています。
ユニットケアのメリット

1. 心地よい生活環境
小規模でアットホームな雰囲気は、従来の大規模施設にはない安心感を提供します。 また、入居者専用の個室があるため、プライバシーが守られます。自宅で愛用している物の持ち込みもでき 、自宅のように過ごすことができます。共有スペースでは、他の入居者や職員との交流があるため、集団に属し、人間関係をつくることもできます。
2. 自己決定の尊重
日々の過ごし方など、自分の意思を尊重される生活が可能です。 施設によっては、食事時間を調理後一定時間以内であれば自由な時間に食事できるという体制を取り入れているとこともあります。また、簡易的なキッチンを各ユニットに設けている施設では、各ユニットでご飯を炊き、味噌汁を作るなど、厨房で作る料理だけではない出来立て感を味わうことができるのも特徴です。
3.一人ひとりに合わせたケアを受けられる
介護職員は基本的に各ユニットで専任し、常駐しているため、いつも決まった職員に対応してもらえるようになります。一人ひとりの生活リズムを把握しやすくなるため、利用者に合わせた日常生活を送れるようなケアを受けることができます。
1. ケアの質が向上
ユニットで職員が固定配置されるため、入居者との信頼関係を構築しやすくなります。また、ユニットは通常10人以下のため、少人数制により、一人ひとりに集中してケアができ、きめ細やかな対応が可能です。毎日接するため、入居者のわずかな変化にも気づきやすくなります。どのようなことで喜怒哀楽があるかを把握し、その人らしい生活を送れるようなケアを行えます。
2. 介護技術のスキルアップ
ユニットを専任するため、幅広いケアが求められるようになり、さまざまなスキルを身につけることが可能です。入居者との触れ合いを好む職員の場合はとても良い環境でしょう。一人で数名の入所者を受け持つため、複数の業務にも柔軟に対応できる人にとっては、十分に力を発揮できる場でもあります。
ユニットケアの課題
1. 運営コストの増加
少人数制のユニットケアや個室化には多くのメリットがありますが、その一方でコスト面での課題も存在します。
まず、少人数制であることから、施設の設計や職員の配置において、どうしてもコストがかさむ傾向があります。ユニットごとに生活空間を分ける必要があるため、建築面積が広くなりやすく、それに伴って建設費も上昇します。
また、個室の場合は多床室と比べて、建築や設備の設計にかかる費用が高くなるだけでなく、冷暖房や照明などの光熱費も増加する傾向があります。
少人数制であるため、施設設計や職員配置においてコストがかさむ可能性があります。また、個室の場合は多床室に比べて、建設や設備の設計のコストも上がることや光熱費が高くなります。
2. 職員の負担
入居者一人ひとりへの対応が求められるため、職員には高いスキルと体力が必要です。向き合う時間が増えるため、職員個人への期待値が高くなりストレスを感じやすくなるかもしれません。
特に夜間は、少人数の職員で対応するケースが多く、負担が集中しがちです。こうした課題に対しては、見守り機器の導入が有効です。利用者の状態を画面上でリアルタイムに確認できるため、必要なときだけ訪室すればよく、個室のドアを開けて睡眠を妨げることもありません。
このように、テクノロジーを活用することで、職員の身体的・精神的な負担を軽減し、より質の高いケアの提供につなげることが可能になります。
3. 運営方針の統一
ユニットケアでは、職員一人ひとりが重要な役割を担うため、高いスキルが求められます。しかし、少人数体制であるがゆえに、他の職員のケアを間近で学ぶ機会が少なく、どうしても自己流の介護になりがちです。
そのため、職員間でケアの質を均一に保つには、ユニットごとにリーダーを配置し、継続的な研修や情報共有の場を設けることが不可欠です。定期的な振り返りやケーススタディを通じて、チーム全体のスキルアップを図ることが、質の高いケアの提供につながります。
ユニットケアが求められる背景
介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針に基づき、都道府県は2025年度までに地域密着型介護老人福祉施設および介護保険施設の入所定員のうち、ユニット型施設の割合を50%以上にすることを目標としています。
参照元:介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成30年3月13日厚労告57号)
そのため、ユニットケアを取り入れる施設は今後も増加していくと思われます。
ユニットケア型の施設のご紹介
ユニット型施設では、少人数での生活単位により職員の目が届きやすいという利点があります。しかし、個室であるがゆえに、居室内の様子を確認するには扉を開けて訪室する必要があり、特に夜間の見守りでは入居者の睡眠を妨げてしまうこともあります。これは、日中の生活リズムにも影響を及ぼしかねません。
そこで注目されているのが「見守りライフ」の導入です。見守りライフを活用すれば、居室の扉を開けることなく、画面上で入居者の状態をリアルタイムに確認することが可能です。入居者のプライバシーを守りながら、職員の負担も軽減できるという点で、多くの施設で導入が進んでいます。
今回は、「見守りライフ」を導入しているユニット型施設をご紹介します。
社会福祉法人釧路創生会 特別養護老人ホームさくらの里様(北海道)
さくらの里様は、全室個室のユニット型の特養です。ユニットごとに家庭的な雰囲気の中で食事ができ、ご利用者様一人ひとりの状態に合わせた介護を行っていらっしゃいます。活き活きと笑顔で過ごしていただけるよう、尊厳と思いやりの心のこもった質の高いサービスの提供に努め、地域の皆様から信頼される施設づくりに取り組んでおられます。
社会福祉法人末広会 特別養護老人ホーム春香苑・第2春香苑 様(関東地方)
春香苑・第2春香苑様は、埼玉県で全室個室の特養です。 画一的なマニュアルどおりのサービスを一方的にご提供するのではなく、ご利用者様の身体状況は勿論、今まで歩んで来られた人生における経験や価値観・嗜好に至りますまで、ご利用者様お一人お一人を私共スタッフがよく理解させて頂いた上で、それぞれのご利用者様に合った介護を行っておられます。
まとめ
ユニットケアは、入居者に家庭的で温かい環境を提供し、職員にとっても効率的で質の高いケアを実現できる介護方式です。運営には課題も伴いますが、これからの高齢社会において、ユニットケアはますます重要な役割を果たしていくと期待されています。
もしユニットケア導入を検討されている場合は、施設の設計や職員教育など、専門家と連携しながら計画を進めることをおすすめします。
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