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介護報酬改定【令和8年度】何が変わる?臨時改定のポイントを分かりやすく解説

生産性向上推進体制加算がカギとなる令和8年度の介護報酬改定。
何が変わる?介護報酬改定は何年ごと?いつから?処遇改善の臨時改定と事業所が準備すべきポイントを分かりやすく整理します。
介護報酬改定は何年ごとに実施される?
介護報酬改定は、介護保険制度が始まって以降、原則として3年に1回行われてきました。
なかでも令和8年度(2026年度)の介護報酬改定は、これまでの改定とは性質が大きく異なります。通常の改定スケジュールを待たず、「期中(臨時)改定」として実施される点が最大の特徴です。
介護報酬改定の基本サイクル
| 年度 | 改定の位置づけ | 補足 |
|---|---|---|
| 令和6年度(2024) | 通常改定 | 3年に1回の定例改定 |
| 令和8年度(2026) | 臨時(期中)改定 | 人材対策のため異例実施 |
| 令和9年度(2027) | 次回通常改定予定 | 本来の改定タイミング |
参照元:厚生労働省 老健局「介護報酬改定の施行時期について」
直近では令和6年度(2024年度)に通常改定が行われ、その次は令和9年度(2027年度)が予定されています。
ところが今回、令和8年度(2026年度)に改定が実施されることになりました。これは本来のスケジュールを前倒しする形で行われる、いわば「例外的な改定」です。
この事実からも分かる通り、今回の改定は「調整レベル」ではなく、今すぐ手を打たなければならない課題があるという国の強いメッセージが込められています。
なぜ令和8年度は「臨時改定」なのか
厚生労働省が臨時改定に踏み切った背景には、介護現場の人材不足があります。
これまで何度も処遇改善は行われてきましたが、それでもなお、他産業との賃金格差は埋まらず、人材の流出が続いているのが現状です。
もし次の通常改定である令和9年度まで対応を待てば、現場の疲弊はさらに進み、事業継続が難しくなる事業所も増えかねません。
そこで今回は、「令和9年度を待たず、期中で処遇改善を行う」という異例の判断がなされました。
つまり令和8年度改定は、介護人材をこれ以上失わないための「緊急対応」という位置づけであることを、まず押さえておく必要があります。
参照元:社会保障審議会介護給付費分科会「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」
処遇改善加算はどう変わる?
今回の改定で、最も大きな変更点のひとつが処遇改善加算の対象者の拡大です。
対象者
これまで処遇改善の中心は「介護職員」でしたが、令和8年度からは考え方が大きく変わります。
対象は「介護職員」から、「介護従事者全体」へ。
看護職員、ケアマネジャー、生活相談員、事務職員など、現場を支える多様な職種に配分できる仕組みになります。
| 区分 | これまで | 令和8年度から |
|---|---|---|
| 対象の考え方 | 介護職員中心 | 介護従事者全体 |
| 配分可能な職種 | 主に介護職 | 看護職・ケアマネ・相談員・事務職など |
| 評価の視点 | 個人 | チーム・体制 |
これは単なる対象拡大ではなく、チームで現場を支える体制そのものを評価するという方向転換だと受け取ることができます。
対象サービス
令和8年度改定では、処遇改善加算の対象サービスも拡大されます。
これまで対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援(ケアマネ事業所)が、新たに算定対象となります。
| サービス種別 | これまで | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 対象外 | 対象 |
| 訪問リハ | 対象外 | 対象 |
| 居宅介護支援 | 対象外 | 対象 |
特に居宅介護支援は、「処遇改善とは縁がなかった」という認識を持っている事業所も多い分野です。
しかし今回の改定によって、ケアマネジャーの処遇改善も制度として位置づけられたことは、業界全体にとって大きな転換点だと言えるでしょう。
参照元:厚生労働省 老健局「令和8年度介護報酬改定について」
月額最大1.9万円、その中身をどう理解するか
介護職員のみならず、介護従事者を対象に、幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置を実施するとともに、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置を実施するとあります。
介護職員について合計最大で月1.9万円相当の処遇改善が想定されています。

参照元:厚生労働省 老健局「令和8年度介護報酬改定について」
月額最大1.9万円相当の内訳(介護職員の場合)
| 内訳 | 月額目安 | 内容 |
|---|---|---|
| ベースアップ分 | 約10,000円 | 幅広い賃上げ |
| 定期昇給分 | 約2,000円 | 昇給相当 |
| 上位区分上乗せ | 約7,000円 | 生産性取組が条件 |
| 合計 | 最大19,000円 | 取得区分により変動 |
※あくまで「最大値」であり、実際の金額は 区分・配分方法・職種 によって異なります。
この金額は、ベースアップ分、定期昇給分、そして新設される上位区分による上乗せを合算したものです。
ただし重要なのは、「必ず1.9万円上がる」という意味ではない点です。
取得する加算区分や、事業所内での配分方法によって、実際の金額には差が出ることに注意が必要です。
そのため、金額だけを見るのではなく、「どうすれば上位区分を取れるのか」という視点で制度を理解することが欠かせません。
上位区分のカギは「生産性向上」と「ICT」
では、ここで加算の要件を詳しく見ていきましょう。
令和8年度の介護報酬改定で新設される処遇改善加算の上位区分(Ⅰロ・Ⅱロ)では、生産性向上への取り組みが明確な評価軸となりました。
単に人員を確保しているかではなく、ICTや業務改善によって職員の負担を軽減し、現場を持続可能にしているかが問われる仕組みです。
サービス類型ごとに求められる要件
処遇改善加算の上位区分(処遇改善加算Ⅰロ・処遇改善加算 Ⅱロ)の取得要件は、サービスの類型によって異なります。
令和8年度特例要件のア~ウのいずれかを満たすこで加算ⅠロやⅡロの取得が可能になります。
令和8年度特例要件
| サービス類型 | 主な要件 | 評価される取組 | |
|---|---|---|---|
| ア | 訪問・通所系 | ケアプランデータ連携システム加入+実績報告 | 情報連携・事務作業のデジタル化 |
| イ | 施設・居住系 | 生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱ+実績報告 | 見守りセンサー・インカムなどのテクノロジー導入、委員会設置 |
| ウ | 社会福祉連携推進法人に所属していること |
参照元:厚生労働省 老健局「令和8年度介護報酬改定について」
施設・居住系サービスでは、生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの取得が要件となります。
これは、見守りセンサーなどのテクノロジー導入だけでなく、業務改善を継続的に検討・実行する体制が整っているかまで含めて評価する加算です。
一方、訪問・通所系サービスでは、ケアプランデータ連携システムの利用が求められます。
紙やFAXを前提とした業務から脱却し、情報共有や事務作業の効率化に取り組んでいるかが評価されます。
なお、事務負担への配慮措置として、加算の申請時点では「取得・利用の誓約」による算定が認められています。
ただし、これはあくまで準備期間を確保するための措置であり、誓約した以上は年度内に実際の整備を進めることが前提となります。
▼生産性向上推進体制加算 取得要件についてはこちらがおすすめです。
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生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)取得ガイド|要件と機器を解説
特例要件の確認方法と必要な資料
令和8年度特例要件の審査にあたって、計画書や実績報告書とは別に、事前に一律で資料提出を求められることはありません。
ただし、指定権者(自治体)から求めがあった場合に備えて、根拠となる資料を事業所で保管しておく必要があります。 これらの資料は、2年間保存することとされています。
主な要件と根拠資料の例は以下のとおりです。
| 要件 | 根拠資料の例 |
|---|---|
| ケアプランデータ連携システムに加入し、利用していること | 使用画面のスクリーンショット(データの送信又は受信の記録がわかるよう撮影されたものに限る。) |
| 処遇改善加算の申請時点において、生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡを算定していること | 体制届出 |
| 実績報告書の提出までに、生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡを算定していること | 体制届出 |
| 介護サービス事業所等が所属する法人が、社会福祉連携推進法人に所属していること | 社会福祉連携推進認定を受けるに当たって提出し、受理された社会福祉連携推進認定申請書 |
これらは、提出を求められた場合は速やかに提出する必要があります。
提出を求められてから準備するのではなく、あらかじめ保存しておくことが重要です。
参照元:厚生労働省老健局老人保健課 「介護保険最新情報 Vol.1474 令和8年3月4日」
参照元:厚生労働省老健局老人保健課「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」の送付について」
介護職員等処遇改善加算の加算率


参照元:厚生労働省 老健局「令和8年度介護報酬改定について」
令和8年度の介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算の加算率がサービスごと・区分ごとに細かく設定されています。一見すると数字が多く分かりにくいですが、ポイントはとてもシンプルです。
加算率とは、基本報酬や各種加算を含めた「総単位数」に対して、どれだけ上乗せされるかを示す割合です。
たとえば、訪問介護で「加算Ⅰイ」と「加算Ⅰロ」を比べると、ロ区分の方が数%高く設定されています。これは、生産性向上やICT活用に取り組んでいる事業所ほど、より多くの処遇改善原資を確保できる設計になっていることを意味します。
この差は一見わずかに見えますが、加算は毎月継続して算定されるため、年間で見ると事業所収入や職員への配分額に大きな差が生じます。
つまり今回の改定では、「処遇改善加算を取るかどうか」だけでなく、「どの区分を取るか」が極めて重要になっています。
基準費用額(食費)の見直しについて
令和8年度の介護報酬改定では、施設系サービスを中心に基準費用額(食費)の見直しも行われます。
これは、物価上昇や食材費の高騰を踏まえ、現行の基準では施設側の負担が大きくなっている状況に対応するものです。

参照元:厚生労働省 老健局「令和8年度介護報酬改定について」
基準費用額の見直しは、介護報酬とは異なり、利用者の自己負担に直接影響する改定となるため、 対象となる利用者や家族への事前説明が欠かせません。
特に、補足給付(負担限度額認定)の区分ごとの影響については、丁寧に確認しておく必要があります
まとめ

令和8年度介護報酬改定は、単なる「賃上げの話」ではありません。
処遇改善、生産性向上、ICT活用を一体で進める事業所を後押しする改定です。
見守りや業務効率化といった取り組みは、これまで「余裕があればやるもの」と考えられがちでした。しかし今回の改定では、それらが処遇改善と直結する評価軸になっています。
つまり、現場を守るための取り組みが、そのまま制度評価につながる時代に入ったと言えるでしょう。
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