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介護施設のリスクマネジメントの事例と取り組みを解説

介護施設のリスクマネジメントの事例と取り組みを解説

介護施設は大きな事故が起きやすい場所です。高齢の利用者の予期せぬ行動だけでなく、職員が慌ててしまったり、利用者の行動の見通しを立てられなかったりと、さまざまな要因が絡み合って事故につながっていきます。

事故を未然に防ぐためにも、介護施設はリスクマネジメントを常に意識する必要があります。今回は、介護現場で起こり得る事故事例を具体的に紹介しながら、一緒に対策を考えていきましょう。

目次

  1. 1. 介護施設のリスクマネジメントとは?
  2. 2. リスクマネジメントが必要な理由
  3. 3. 介護施設のリスクマネジメントの目的
  4. 4. 介護施設でよくあるヒヤリハット
  5. 5. 介護施設のリスクマネジメント強化方法
  6. 6. 賠償責任の仕組み
  7. 7. リスクマネジメントにおすすめの製品

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1. 介護施設のリスクマネジメントとは?

リスクマネジメントとは、想定されるリスクを未然に防ぐためのプロセスのことを言います。

リスクマネジメントとは、リスクを組織的にマネジメント(管理)することです。リスクという言葉は、日常的には「危険」や「危険性」という意味で用いられています。ビジネスにおいては「事業プロセスにおいて起こりうる不確実性の高い事象」を示す言葉として利用されます。

介護施設におけるリスクマネジメントとは、実際に起きるかもしれない事故やトラブルを「現場で必ず起こるもの」として捉え、スタッフ全体で共有し、管理していくことです。

介護事故を完全に防ぐことは、基本的に不可能なものです。まず施設側が行うのは、職員から上がってきたヒヤリハット事例や実際に起きた事故事例について原因を分析すること。そしてそれらを施設全体に周知徹底し、スタッフ全体の共通認識とすることで、重大な事故を未然に防ぎ、リスクを軽減する次のステップへとつながっていきます。

また、大事なことは事故防止の取り組みと同時に、実際に事故が起きたときの対処法についても準備をすることです。事故が起きても起きなくても、「事故はいつも起きる」という認識が介護職員には不可欠なのです。


2. リスクマネジメントが必要な理由

リスクマネジメントの目的は、リスクを最小限に抑え、企業や施設の価値の維持・増大を実現することにあります。介護事業を運営する上での安定的、持続的な成長に欠かせません。

2020年から始まった新型コロナウイルスの蔓延は、介護施設に関わる人のみならず、世界中の人の生活を一変させました。新しい感染症が猛威を振るわずとも、介護施設はインフルエンザなどの季節性感染症の流行など、いつもリスクにさらされています。

新型コロナウイルスの感染が始まってから1年後の2021年、厚生労働省は「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」と「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」において、コロナ時代、大規模災害発生時に対応するため、通常時よりもリスクマネジメントを強化することを打ち出しました。その中で特に注目したい記述は下記の通りです。

1) 業務継続計画(BCP)

……業務継続計画(BCP)で大事なのは、重要な事業を中断させないこと。単なる感染対策マニュアルと違い、平常時と不足の事態の発生時の両方で「各担当者を決めて、誰が何をするかを明確にすること」「連絡先を整理しておくこと」「必要な物資を整理しておくこと」「今の3点を組織で共有すること」「必要に応じて研修・訓練(シミュレーション)を行うこと」を徹底します。

BCPとは地震や水害などの緊急事態時における企業や組織の事業継続計画(Business Continuity Planning)のことです。2021年4月に施行された介護報酬の改定により、2024年より介護事業者にBCP策定が義務付けられました。

介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支えるもので欠かせないものです。大規模災害の発生や感染症の流行に適切に対処し、その後も利用者に必要なサービスを継続的に提供できる体制を構築することが求められています。

 

2)事故発生の防止のための措置が講じられていない場合に基本報酬を減算

……安全管理体制未実施減算と安全対策体制加算が新設されたことにより、「事故の発生または再発の防止策を講じられていない場合、基本報酬から1日あたり5単位減算」「安全対策部門を設置し、担当者を配置した際に20単位を加算」となりました。

安全対策体制加算とは、介護事故を防ぐための対策強化を行った際に加算される手当です。外部の研修を受けた担当者が配置され、施設内に安全対策部門を設置し、組織的に安全対策を実施する体制が整備されていることを条件に20単位を加算されます。

外部の研修とは、何を示すのでしょうか。厚生労働省の資料によると以下の団体が開催する研修を想定しているとあります。
・公益社団法人全国老人福祉施設協議会
・公益社団法人全国老人保健施設協会
・一般社団法人日本慢性期医療協会 など

この研修は介護現場における事故の内容、発生防止の取り組み、発生時の対応、施設のマネジメントなどを含む内容となっています。

安全管理体制未実施減算とは、運営基準における事故の発生又は再発を防止するための措置が講じられていない場合は、1日につき5単位減算されます。

具体的には、以下の基準を満たさない場合です。

・事故発生防止のための指針の整備
・事故内容の報告、事故の分析、改善策の周知徹底、体制の整備
・事故防止検討委員会及び研修の定期開催
・安全管理担当者の配置

 

3)介護保険施設等における事故の報告様式の統一化

……起こった事故を分析し、予防対策に有効活用していくため、介護事故報告書の様式が国で定められました。

市町村に事故報告を行う場合は、将来的な事故報告の標準化による情報蓄積と有効活用する観点から、可能な限り厚生労働省の様式を使用することされています。

 

3. 介護施設のリスクマネジメントの目的

新型コロナウイルス蔓延や度重なる災害といった非常事態でも滞りなく介護サービスを提供するためにも、平常時のリスクマネジメントが欠かせません。それでは平常時に介護施設が目的とするリスクマネジメントとは、どのようなものになるでしょうか。

1) 利用者を事故から守る

心身機能が低下している介護施設の高齢者は、自ずと事故が発生する危険性が高くなります。介護事故は施設利用者の命に関わる問題です。事故防止のため、職員は細心の注意を払う必要があります。

2) 訴訟のリスクを下げる

介護施設が抱えるリスクは、転倒などの事故によって利用者の家族から訴訟が起きるという点です。高額な賠償請求をされた場合、介護施設そのものの経営が立ち行かなくなることもあるでしょう。また、訴訟が起きると、地域での介護施設の信頼が一気に失われてしまいます。訴訟リスクを下げるためにも、リスクマネジメントは不可欠なのです。

3) 職員が働きやすい環境を整える

事故が起きても、職員が安心して報告できる心理的安全性を担保した施設であればよいのですが、なかには介護現場で起きるヒヤリハットや事故を、担当職員のせいにして問題解決を図る施設もあります。事故を個人の問題としていては、施設が抱える問題はいつまでも改善しません。役割分担を明確化し、担当の仕事にスタッフを集中させるだけでも、職員の心理的な負担が減り、事故の減少につながります。リスクマネジメントは、職員の働きやすさにも直結しているのです。

 

4.介護施設でよくあるヒヤリハット

介護施設でのリスクマネジメントとは冒頭で、職員から上がってきたヒヤリハット事例や実際に起きた事故事例について原因を特定し分析すること。それらをスタッフ全員で共有し、記録し、管理していくことであるとご紹介しました。では、具体的には、どのようなヒヤリハット事例や事故がリスクマネジメントの対象になるのかを見ていきましょう。

公益財団法人 介護労働安定センターが2017年に発表した「イラストで見る介護事故事例集〜知っていますか?介護現場の隠れたリスク」には、次のような事例がわかりやすく紹介されています。

【利用者が起点となって起きる事故・ヒヤリハット事例】

●利用者の後ろから声をかけたら転倒してしまった

●食事介助中、一旦落ち着いたむせ込みが激しくなった

●車いすが石などにぶつかり、利用者が転落

●利用者がソファから立ち上がるときに転倒

●タンスの引き出しを引いたはずみで転倒

●利用者が車のステップを踏み外して転倒

 

【介護職員が起点となって起きる事故・ヒヤリハット事例】

●力任せの移乗により、職員が腰を痛めて動けなくなった

●ベッドから車椅子への移乗時に利用者と一緒に転倒

●入浴時に介助に集中し、無理な姿勢で腰を痛めた

●利用者の忘れ物に気を取られ、浴室ですべって転倒

 

5.介護施設のリスクマネジメント強化方法

それでは前章で紹介した施設利用者、介護職員がそれぞれ起点となって起きた事故・ヒヤリハット事例の原因を探り、リスクマネジメントへとどのように展開していくのか見ていきましょう。

【利用者が起点となって起きる事故・ヒヤリハット事例】

利用者の後ろから声をかけたら転倒してしまった

なぜ事故が起きたのか。原因を探ると、職員の側に慢心がありました。高齢者はいつも変わりない様子に見えても、足腰やバランス感覚は日に日に衰え、ときが経つにつれて転倒しやすくなるという認識が不足していました。またその可能性について、スタッフ同士で情報共有がされていませんでした。

事故防止に向けて
まず転倒アセスメントシートを作成します。そして職員同士の申し送りの際に、実際にあった情報を皆で共有して、ヒヤリハットに対する認識を深めていきます

 

食事介助中、一旦落ち着いたむせ込みが激しくなった

事故が起きた原因は、誤嚥リスクに対する職員の認識不足でした。高齢者の誤嚥は、そのまま命に関わる大きな事故につながります。

事故防止に向けて
一度むせ込むと、高齢者はさらにむせやすくなります。むせ込みが少し続いた場合は、看護師に相談するなどして、慎重に対応しましょう。

 

【介護職員が起点となって起きる事故・ヒヤリハット事例】

力任せの移乗により、職員が腰を痛めて動けなくなった

原因は、職員による体力の過信や経験不足から、力任せの移乗介助をしてしまったことです。忙しいときは、ベテラン職員でも力に頼った介助をしてしまいがちです。自分の力を過信せず、細心の注意を払って移乗するようにしましょう。

事故防止に向けて
腰に負担がかからない介護技術の習得がまず第一です。その後、福祉機器を活用するなど、持ち上げない介護の取り組みをするようにしましょう。

 

ベッドから車椅子への移乗時に利用者と一緒に転倒

原因は、ベッドと車椅子の間に物が落ちていたことでした。それを職員が踏んでしまうことで、バランスを崩し、転倒へとつながりました。

事故防止に向けて
移乗介助の前に、まずベッドと車椅子の位置や高さ、そして床に物が落ちていないかを事前に確認します。また利用者の身体能力を把握しながら、動作のたびに声をかけて、慎重に移乗しましょう。

 

その他に車椅子の事故は、ベッドから移乗する際にバランスを崩すこと、車椅子のブレーキがしっかりとかかっていないことが原因で度々発生します。介助する職員の人数不足、車椅子やベッドが適切な高さになかった、車椅子のブレーキが緩んでいたことなどが挙げられるでしょう。環境を整備することは重要です。

車椅子のみならず、手すりなど介護現場で使用している福祉用具については点検方法をマニュアル化し、定期的な点検日を設けましょう。不具合を発見し事故のリスクを減らすことができます。

 

薬の飲み間違え

これらの事例の他に高齢者に多い誤薬の事故があります。加齢によりさまざまな病気や感染症などを発症しやすく、継続的に服薬されている高齢者は多いです。

薬の管理は医療行為にあたるため、医師や医師の指示を受けた薬剤師、看護師など資格が有る者しか行えません。
介護職は薬の在庫管理や服薬指導などの服薬管理はできませんが、薬の準備や確認、お声がけなどの服薬介助を行います。誤薬とは、誤った種類、量、時間、方法で薬を飲むことを指します。

誤薬は、薬の内容や量によっては生命に重大な危機を及ぼすことになり、決して起こってはならない事故です。しかし、「ついうっかり」「思い込み」などのヒューマンエラーが最もおこりやすい事故でもあります。そのため、薬を扱う際には複数回のチェックを行うことを習慣化することが重要です。

誤薬がおこる要因として、薬に対する知識や意識が低いこと、食事時間はいくつかのケアが重なりあわただしい状況があること、確認不足、薬に関するルールがチーム内で統一されていないなどが挙げられます。

これらを解決するためには、まず「配薬ケースから薬を取り出すとき」、「利用者のそばにいったとき」、「薬袋をあけて口に入れる前」の最低3回はその薬が本人のものであるか確認する、といった基本事項を職員全員で徹底することが求められます。

 

6.賠償責任の仕組み

事故やヒヤリハットから、リスクマネジメントの体制・管理を徹底していくことが重要になります。ただ、先ほどご紹介した事故には大きなリスクがあることを忘れてはいけません。 というのも、介護施設は訴訟のリスクを抱えているためです。ここで賠償責任の仕組みをご紹介します 。

責任の認定は、事実・結果・因果関係・過失の4つから判断されます。

では例を用いて見てみましょう。

【事例】職員が居室に置き忘れたモップに利用者がつまづき、転倒してしまった

責任認定のポイントは、下記の1〜4までを順番に検討します。

 

1 事実 置き忘れたモップにつまづいて転んでしまった

2 結果 骨折した

3 因果関係 骨折は転んだことが原因(1と2それぞれに相互作用する)

4 過失 転倒を予見できたのに対応が不十分だった(1と2の間に起きるのが過失)

 

重要なのは、4の過失です。介護者である職員が事故を予見できたかどうかがポイントになります。

職員は、居室にモップを出しっぱなしにしていました。しかしながらその状態を放置したままでは、利用者が歩行の際に転倒するおそれがあることを予め知っていたことになります。

すると、『転倒を予見できた』と裁判所に判断され、「予見可能性に基づく結果回避義務違反」に問われるのです。

介護事業者は、介護サービスの提供にあたって、被介護者の生命、身体、財産といった権利、利益を侵害することなく安全にサービスを提供する安全配慮義務を負っています。この義務を怠った場合、安全配慮違反となります。

これは介護事故の発生に「予見可能性」があったかどうかで判断されます。予見可能性とは、危険な事態や被害が発生する可能性があることを事前に認識できることを言います。

介護施設側が事故の発生を予見でき、それを回避するための適切な措置を行わなかった場合、予見可能性に基づく結果回避義務違反、安全配慮義務違反に該当することになるのです。

しかし職員の経験による予測や、その場の状況の皮膚感覚での予見だけではリスクマネジメントにも限界があります。上記の力任せの移乗により、腰を痛めた職員の事例で紹介された「事故防止に向けて」の記述にあるように、福祉機器を用いた予見、事故予防も積極的に利用したいところです。

 

7.リスクマネジメントにおすすめの製品

利用者のすぐそばに職員がいて対応している場合は、やはり目視や皮膚感覚で危険を察知し、施設内で集合知として積み重ねられたヒヤリハット事例などをもとに、事故を未然に防ぐ予見が必要になります。

しかし職員と利用者の距離が離れている場合、利用者の動き出しのタイミングで事故の芽を摘むには、福祉機器の活用が欠かせません。

トーテックアメニティの「見守りライフ」は、特に職員の数がぐっと減る夜間帯に大きな力を発揮します。

「見守りライフ」は、利用者のベッドの脚の下に設置される荷重センサーです。4つのベッド脚にあるセンサーで、その瞬間瞬間、ベッド上の重心がどこにあるのかを測っているため、利用者の現在の体勢が具体的に判断できます。

荷重が半分の場合は、ベッドから利用者の足を下ろしている体勢。重心位置が左右に揺れていれば、寝返りを打っている。荷重分布が頭から足元の方へ偏っていたなら、起き上がりのポーズというように、「見守りライフ」は瞬間的に

・臥床
・動き出し
・起き上がり
・端坐位
・離床

の5つの行動を察知します。その通知が職員のスマートフォンにダイレクトに届くため、大事に至る前に、スタッフの予見行動がスタートできるのです。

ヒヤリハット・事故事例から事実、結果、因果関係、過失のポイントを探り、スタッフ内で集合知を共有しながらリスクマネジメントを高めていくのが介護施設の在り方です。しかしそれだけでは事故の芽を摘みきれないため、人間の第二の目となり得る「見守りライフ」などの福祉機器を積極活用していきたいものです。介護職員の心理的安全性を高め、より精度の高いケアの一助となるでしょう。

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