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介護現場のヒヤリハットとは?事例や対応策、報告書のポイントを徹底解説

介護現場のヒヤリハットとは?事例や対応策、報告書のポイントを徹底解説

介護現場でよく聞かれる言葉の1つに、「ヒヤリハット」があります。この「ヒヤリハット」とは具体的にどういう状況を指すのか、疑問を持つ方も少なくないでしょう。

今回は介護現場におけるヒヤリハットとはそもそも何なのか、介護現場で求められるヒヤリハットの原因を分析し、未然に防止し事故ゼロを実現するための方法について解説していきます。

目次

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1.介護現場のヒヤリハットとは?

「ヒヤリハット」とは、実は造語です。危ない状況に遭遇して、思わず冷や汗をかく時の「ヒヤリ」と、声も出ないほどあっと驚く「ハッと」を掛け合わせた言葉になります。車を運転する人ならば、死角から車が急に出てきて、車と車が接触するような「もう少しで事故になっていた」という状況に遭遇したことは一度や二度ではないでしょう。介護におけるヒヤリハットの言葉の違いとは、「重大事故につながらなくても、事故になっていた可能性のある体験・事例」を指します。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、安全衛生において、よく検索されているキーワードの1つに「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」というものがあります。

ハインリッヒとは人名で、アメリカの損害保険会社に勤めていた安全技師のこと。彼は労働災害における怪我の程度を分類し、その比率を次のように発表しました。

「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみではない)があったとすると、29回もの軽傷(応急手当だけで済むようなかすり傷)、また傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)を300回も起こしている」

要は、300回の無傷害事故の背後には、数千もの不安全な行動や安全とは言い切れない状況が隠れていると指摘しているのです。介護現場に当てはめるならば、骨折などの重大事故1件の裏には、転倒などによる29回のかすり傷や打ち身、300件もの事故には至らぬヒヤリハットの状況が存在していると言い換えられるでしょう。

大事なのは、比率の数字ではありません。労働災害の裏には、事故に結びつく何かしらの原因が必ず潜んでいるという教訓を示しているのです。


2.ヒヤリハットが起きる原因とは?

介護現場でヒヤリハットが起きる要因は、主に人的なものと環境要因に分けられます。詳しくは、以下の3つが考えられます。

・入居者本人によるもの

・介護スタッフやご家族によるもの

・介護環境によるもの

それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。

入居者本人によるもの

入居者本人の健康状態、病状の進み方によって、ヒヤリハットの可能性は高まります。認知症やパーキンソン病の症状が出ている方、足が不自由な方でよく起きるのが、転倒・転落事故です。また歩行だけでなく、生活のさまざまな場面でも注意が求められます。食事や入浴、排泄がひとりでは困難な方もヒヤッとした状況につながりやすいため、注意深い見守りが必要です。事故を防ぐためには、入居者1人ひとりの状況やバイタルを把握するのはもちろんのこと、日々のコンディションを観察して、ケアに携わることが肝心です。

介護スタッフにご家族によるもの

入居者だけでなく、介護を支援する側がヒヤリハットの原因につながることもあります。介護業界では慢性的な人手不足が指摘されており、残業や長時間労働を行っている施設もあるでしょう。職員の負担が大きくなればなるほど、疲労による集中力の低下が事故につながる可能性を高めてしまいます。また入居者のご家族が施設に訪れ、職員に代わって一時的にケアを行う場合にも、ヒヤリハットにつながることもあります。職員1人ひとりの意識の再確認はもちろんですが、事故防止のためには適切な監督体制を確立し、リスクの評価や安全教育の徹底をするなど、施設一丸となった対処が求められます。

介護環境によるもの

介護施設の環境や設備がヒヤリハットの出来事や事故の要因となる場合もあります。具体的には、センサーマットのコードに入居者が足を取られてしまう、施設玄関などの出入り口でマットなどのちょっとした段差で転倒してしまう。介護ベッドの高さが適切でなかったために、車椅子へ移乗する際に転落してしまうなどの事例です。環境要因にまつわるものは、ヒヤリハットの起こりやすい危険な場所をスタッフが事前に把握し、入居者と共に日常で気をつけて行動する必要があります。場合によっては、施設や福祉機器の改善を図る必要があります。


3.ヒヤリハットのよくある15事例

前章でご紹介したように介護現場では、主に人的要因や環境要因によるヒヤリハットが日々発生しています。それでは、具体的なヒヤリハットの事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。

公益財団法人 介護労働安定センターが2018年3月に発表した「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書によると、厚生労働省によせられた介護事故276事例のうち、事故状況を分類すると、転倒・転落・滑落による事故が65.6%、誤嚥・誤飲・むせこみによる事故が13%、ドアに体を挟まれたが0.7%、盗食・異食が0.4%でした。

上記の結果から傾向として言える、介護現場のヒヤリハット事例のよくある15パターンをまとめて紹介していきます。

①【トイレ編】トイレへの移動に関して
【内容】車椅子とトイレのドアに足を挟んだ
【原因】車椅子から足先が出ていることを職員が確認していなかった
【対策】スタッフが車椅子の背中側からトイレに移動する際、入居者の足先、足の位置を必ず確認しながら車椅子を操作する

②【トイレ編】トイレ内で入居者が転落
【内容】介護スタッフが目を離している間に、入居者が1人で清潔にしようとして便座から転落
【原因】認知症やパーキンソンの症状で立位での動作が不安定であるにも関わらず、入居者を1人にしてしまった
【対策】トイレでの介助中は、職員が必ずそばで見守るようにする

③【トイレ編】職員がいても移乗時に転倒
【内容】便座から車椅子の移乗時に転倒した
【原因】尿が床に飛び散るなどして、足元が濡れていた。入居者が手すりを持って、体を支えていなかった
【対策】トイレを使用する前と、便座から移乗する前に、足元が濡れていないか確認する。手すりや車椅子のアームレストを入居者にも持ってもらい、力を借りる形で移乗するようにする

④【食事編】入れ歯を忘れる
【内容】入居者が入れ歯をせずに食事を食べ始めてしまった
【原因】入れ歯が装着されているか、職員が確認を怠った
【対策】食事前に確認事項として、入れ歯が必要な方のチェックをする

⑤【食事編】入居者が隣の方の食事を食べてしまう
【内容】隣の入居者の食事に手を伸ばして、食べてしまった
【原因】認知症が進んでいるにもかかわらず、職員の目の届きにくい端の席に案内していた
【対策】スタッフが常に近くにいる席にお通しする

⑥【服薬編】朝と夜の薬を間違えてしまう
【内容】朝と夜の薬のセットが間違えていた
【原因】薬の保管方法が他の時間帯と混合し易い状態だった。看護師のチェックが行き届いていなかった
【対策】内服薬の管理ボックスを色分けするなどして、担当者が変わっても一目で分かるようにする

⑦【服薬編】他の入居者と薬を間違える
【内容】他の入居者の内服薬を間違えて飲ませかけた
【原因】内服薬の管理をたった1人のスタッフが行っていた
【対策】スタッフ2名で必ずダブルチェックをする。ご本人に名前の確認を行ってから薬を飲んでもらう

⑧【着替え編】靴下を履こうとして椅子から転落
【内容】靴下を履こうとするが、体のバランスを崩して椅子から転落した
【原因】椅子に座った姿勢がそもそも不安定であった
【対策】体が加齢とともに硬くなっているため、靴下の脱ぎ着は前に倒れやすい。しっかりと座る姿勢を整えてもらう

⑨【着替え編】内出血を見つける
【内容】着替えの介助中に内出血の箇所を見つけた
【原因】日常生活のどのタイミングで内出血を起こしていたか、確認がそもそも不十分であった
【対策】ご本人によるものか、職員の介助中に起きたのか不明であったが、1日に必ず二度行う着替えのタイミングで、皮膚の状態を常に確認する

⑩【移乗編】車椅子がひっかかり転落
【内容】段差に車いすが引っかかり、転落しそうになった
【原因】段差の確認していなかった。そもそも車椅子のスピードを出し過ぎていた
【対策】屋内であればマットなどの段差を、屋外であれば歩道との段差を十分確認する。屋内はもちろんだが、屋外では特にスピードを緩める

⑪【移乗編】車椅子に足がひっかかった
【内容】車椅子のフットレストから足が落ちたまま、車椅子を押してしまった
【原因】職員による入居者の足元の確認ができていなかった
【対策】車椅子のフットレストから足が簡単に落ちないようにカバーなどをつける

⑫【移乗・移動編】異食をしてしまった
【内容】移動中に植木の葉っぱや花を口に入れてしまった
【原因】認知症の進んだ入居者であるにもかかわらず、職員の目の届かない状態を作ってしまい、異食が発生した
【対策】空腹感を感じる時間帯には施設内の徘徊や外出をしないようにする。職員が近くにいて付き添える環境を作る

⑬【入浴・着替え編】脱衣所で転倒しかける
【内容】入居者が脱衣所でズボンを脱ぐ際に、バランスを崩した
【原因】立ってズボンを脱ごうとしており、近くに体を支える手すりがなかった
【対策】職員が入居者を椅子に座らせたあとで、ズボンを脱ぐよう声がけをする。脱衣所では、正面に手すりがある席へと誘導する。床に足が滑らないマットを敷く

⑭【入浴編】浴室内で転倒
【内容】脱衣所から浴室内に入った際、入居者が滑ってしまい、転倒してしまった
【原因】脱衣所と浴室の床の滑りやすさへの配慮が欠けていた。他の職員が流し忘れたシャンプーなどが残っており、床を滑りやすくしていた
【対策】1人で歩かれる方も、浴室内では脇の下に手を添えるなど、慎重な補助を行う。浴室内の床には滑り止めマットを敷く。床の洗剤は随時流すように注意する

⑮【入浴編】シャワーの温度が適切でない
【内容】シャワーの冷たい水や、必要以上に熱いお湯が入居者の体にかかってしまった
【原因】浴室を以前使用した方の温度のままになっており、シャワーの温度を確認していなかった
【対策】入居者の体にかかる前に、職員が洗面器にお湯をためるなどして温度を確かめる。シャワーの出始めは温度変化があるので、スタッフが必ず手で温度を確認する


4.ヒヤリハット報告書を書く目的

介護事故につながる恐れのある状況報告を「ヒヤリハット報告書」と呼びます。その名の通りヒヤッとしたケースを、職員が記録として書き残したものです

ヒヤリハット報告書は記録に残すことが目的ではありません。この章ではその効果や目的について説明していきます。

入居者の事故防止

ヒヤリハット報告書を書くことは、介護職員の頭の中を整頓しクリアにするだけでなく、事故につながる要因を明確にします。前述した「ハインリッヒの法則」ではありませんが、誰かが体験したヒヤリハット事例は、他の職員も体感する可能性が高いため、何はともあれ原因を明らかにすることがまず必要になります。

要因さえ分かれば、あとは検証するのみです。検証することで、未来に起こり得る事故を未然に防げるため、報告書を書く際は一連の行動を丁寧に確認する必要があります。ただ報告書を書くという作業で終わらせず、事例を参考になぜヒヤリハットが起きたのかを分析し、潜在的な問題を顕在化させることが重要です。

検証で見えた課題に対して、スタッフの研修の実施や、設備の改善など、具体的な策を練ることで、同じような事故やヒヤリハットの再発を防ぐことができます。

介護スタッフ間の情報共有

ヒヤリハット報告書をデータに残す習慣を付けることで、施設内のスタッフ全体で情報共有がしやすい環境を作り出せます。現場でよく起こりがちなのは、「ミス=よくないこと」という思い込みから、本人が事実報告をためらってしまうこと。すると、課題が認識されず先送りになったり、課題が大きくなったりして、施設の信用にも関わります。ヒヤリハット事例はすぐに共有することで、原因を特定し対策を考えることが大切です。

飽くまでも報告する目的は再発防止です。ヒヤリハット報告書を書くことは、「罰」でもありませんし、反省を報告するものでもありません。何よりも入居者のためにも、組織や職場環境のためにも、皆で情報共有することの大切さを学び、介護の安全性を施設全体で高めていく努力が必要です。そして報告書を残し、活用することは、新たに入ってきた経験の浅い新人スタッフのマニュアルにもなりますし、それによって学びにもつながっていくのです。

職員の適切な介護の証明になる

ヒヤリハット事例について正確に記録し作成された報告書は、万が一事故が起こった際にも、それまで適切な対応をしてきたうえで起きてしまったという施設側の証拠にもつながります。積み重ねられてきた証拠は、介護職員や施設を守ることになります。この点からも、ヒヤリハット報告書は丁寧に正確に書くことが求められます。


5.ヒヤリハット報告書の書式とは

ヒヤリハット報告書はまず、端的に記入することです。5W1Hを意識して、誰が見ても状況が理解できる、客観的で分かりやすい文章で綴ります。記載する項目は以下を参考にしてください。

日時 (いつ:When) 令和5年9月1日(金)16:30
場所 (どこで:Where) 居室トイレ
対象者(誰が:Who) 山田花子
発生分類 転倒しそうになった
原因 (どうして:Why) フロアとトイレの段差でつまずきそうになった
対策 (どのようにしていくか:How) フロアとトイレの間に、胸の高さの手すりをつけ、入居者が足のバランスを事前に取れるようにする

さらに付け加えるなら、報告書に職員の主観はなるべく避けるようにしましょう。状況や原因を論理的に整理することが重要です。肝心なのは、客観的事実を述べることです。文章で書くときは、「トイレに入ってすぐのところで〇〇様が前かがみに倒れていた」「近くに車椅子があった」など、職員が見たままの事実を書いていきましょう。職員の「推測」を加えながら原因を書く際は、「車椅子から立ち上がろうとして、転倒したものと思われる」などと、一目で推測だと分かるような文章にすることです。事実と推測は区別して書きましょう。

また、ヒヤリハット報告書は事故が起きた際に、入居者のご家族に見せる可能性もあります。例えば「リハパン」と書かずに「リハビリパンツ」と正式名称で記すなど、専門用語や略語は避け、医療業界や介護業界の関係ではない方にもわかる丁寧な言葉で書くようにしましょう。


6.ヒヤリハットの予防には見守りシステムを

ヒヤリハット事例を職員の間で積極的に報告し、「事故の芽」を摘む環境にする。それによって、チーム一丸となり、危ない状況を職員たちで減らしていくことになりますが、実際に芽を摘むために必要なのは、人の目と福祉機器やツールになります。

前章でご紹介した報告書の記入例の中に、「胸の位置に手すりをつける」という解決策が書かれていました。足が不自由なものの、まだ自立が可能な入居者の場合、職員がある程度そばで見守っている状態でしたら、大きな事故につながる可能性は低いと言えるでしょう。しかし怖いのはスタッフの人数が限られている夜間帯や、職員の目の届かない場所で事故につながる何かが起きることです。

ヒヤリハットの中でも、骨折につながりやすいのは「ベッドからの転落」です。ベッド下の床に置いたセンサーマットは、反応した際にはすでに入居者が離床し、立位に差し掛かっています。その段階で職員が気づいて居室に向かうとしても、運がよければ体を支えることができますが、運が悪かった場合、事故につながりかねません。

入居者の動きを早い段階で察知し、職員が危ない状況に即座に対応できる状態を作ることが、「事故の芽」を摘む環境づくりの第一歩になります。

トーテックアメニティ株式会社の「見守りライフ」は、ベッドの4つの脚で反応する荷重センサーです。入居者が起き上がる時から反応が始まり、即座に職員のスマートフォンに連絡が入ります。

ベッドの上の荷重分布や体動で反応する「見守りライフ」が見られる入居者の状態は5つ。

・臥床
・動き出し
・起き上がり
・端坐位(ベッドの端に座る)
・離床

しかも速度は速く、精度も高く、誤報が少ないのが特徴です。福祉機器に求められるのは、介護職員がその場にいない時にいかに「人の目の代わり」になるか。入居者の事故が起こってから知らせるのではなく、事故が起こりかねない入居者の行動が、より早い段階で職員に知らせることができるため、結果的に事故防止への対応が間に合うのです。

ヒヤリハット報告書で職員の連携をした後に、「人の目以上」になり得る「見守りライフ」の助けを借りる。「見守りライフ」の導入によって、特に夜間帯、不安を払拭し安心が担保された状態で職員がケアできるようになったとしたら、施設全体で考えるべき問題は目先の介護ではなく、さらなるケアの質の向上へと考えに及ぶことができるようになるのです。


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