常勤換算の計算ガイド|常勤・非常勤の扱いを正しく理解

介護報酬加算の算定において、職員の「常勤」「非常勤」の区分は非常に重要です。特に、加算要件における人員配置基準では、単に人数を数えるだけでなく、勤務時間に基づいた「常勤換算」が求められます。
本記事では、常勤・非常勤の定義、専従・兼務の違い、短時間勤務制度の特例、そして常勤換算の具体的な計算方法について、厚生労働省の資料をもとに詳しく解説します。
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常勤とは何か?
「常勤」とは、雇用契約書に記載された勤務時間が、施設の就業規則で定められた常勤職員の勤務時間(通常は週40時間)に達している職員を指します。施設によっては、週32時間を常勤の基準とする場合もあります。これは、施設が定める「1週間に勤務すべき時間数」が32時間を下回る場合に適用されます。
重要なのは、雇用形態に関係なく、勤務時間が基準を満たしていれば「常勤」として扱われる点です。正社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣社員など、雇用形態が異なっていても、勤務時間が基準に達していれば常勤職員とみなされます。
逆に、正社員であっても、家庭の事情などで勤務時間が短縮されている場合は「非常勤」として扱われます。
また、管理者が他の職務を兼務している場合でも、複数の職種の勤務時間の合計が常勤の基準を満たしていれば、常勤として認められます。

常勤と非常勤の違い「休暇・出張時の取扱い」
常勤職員と非常勤職員の違いは、休暇や出張時も注意が必要です。
常勤職員
休暇や出張が1カ月以内であれば、常勤として勤務したとみなされます。つまり、月の中で1日でも出勤していれば、その月は「1人分の常勤職員」として計算されます。
非常勤職員
休暇や出張は「サービス提供に従事した時間」とはみなされず、常勤換算の勤務時間には含めることができません。
この違いは、加算要件における「人員基準の確認」に限った話です。日々の職員配置においては、常勤職員が不在の場合でも、代替職員の配置が必要です。つまり、常勤職員が出張中だからといって、配置基準を満たさなくてもよいということにはなりません。
専従と兼務の違い
職員の勤務形態には「専従」と「兼務」があります。
専従
労働時間中に、特定の職種以外の業務に従事しないこと。
兼務
労働時間中に、複数の職種に同時並行的に従事すること。

例えば、ある職員が管理者として配置され、その勤務時間中に他の業務を行わない場合は「専従」となります。一方で、午前中は看護職員として勤務し、午後は機能訓練指導員として勤務する場合は「兼務」となります。
常勤者の勤務時間の特例
令和6年度の介護報酬改定では、以下の制度に基づく短時間勤務者について、週30時間勤務で「常勤」として扱うことが認められています。
• 育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度
• 男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置
• 「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に沿って事業者が自主的に設けた短時間勤務制度
また、常勤配置が求められる職種において、産前産後休業や育児・介護休業、母性健康管理措置等で休業している場合は、同等の資質を持つ複数の非常勤職員を常勤換算することで、配置基準を満たすことが認められています。

常勤換算方法の計算方法
常勤換算とは、非常勤職員の勤務時間を合計し、それが常勤職員の何人分に相当するかを算出する方法です。
計算式
非常勤職員の延べ勤務時間 ÷ 常勤職員の1カ月の勤務時間
※週32時間を下回る場合は「32時間」を基準とする。
※短時間勤務制度の対象者は「週30時間以上」で常勤扱い
この計算では、以下の点に注意が必要です。
• 残業時間は含めない
• 自費サービスなど介護保険外の業務時間は含めない
• 休暇や出張時間も含めない(非常勤の場合)
また、職員が複数の職種を兼務している場合は、対象職種の勤務時間のみを集計します。
計算例
ある施設の1カ月の勤務実績をもとに、常勤換算数を計算してみましょう。
介護職(常勤職員):5人 → 常勤換算数①=5人
介護職(非常勤職員):3人
非常勤職員の勤務延時間数:252時間
常勤職員の1カ月の勤務時間:168時間
計算式:
252 ÷ 168 = 1.5人
常勤換算数②=1.5人
合計:①5人 + ②1.5人 = 6.5人
この施設の該当月の介護職員の常勤換算数は「6.5人」となります。
常勤換算計算シート
厚生労働省は、常勤換算を簡便に行うためのExcelシートを公開しています。以下のリンクをクリックで直接ダウンロードいただけます。
数式が入っているので、該当の箇所に入力するだけで、月ごとの勤務実績に基づいた正確な常勤換算が可能です。
まとめ
介護報酬加算の算定において、職員の「常勤」「非常勤」の区分は、雇用形態ではなく、勤務時間に基づいて判断されます。特に、非常勤職員の勤務時間を常勤換算する際には、休暇・出張・自費サービスなどの時間を除外する必要があります。
また、短時間勤務制度の対象者に対する特例や、兼務・専従の区分も加算要件に影響するため、制度の理解と正確な運用が求められます。
施設運営者や事務担当者は、厚生労働省の資料や計算シートを活用し、正確な人員配置と加算算定を行うことが重要です。