職員の負担軽減とエビデンス確保を目的とした見守りライフの導入
社会福祉法人末広会 特別養護老人ホーム春香苑・第2春香苑 様

お話を伺った方
社会福祉法人末広会 特別養護老人ホーム春香苑・第2春香苑
左から...
係長 小島様
施設長 山本様
主任 酒井様
主任 石原様
導入前の課題
- 居室内での転倒・転落事故発生時に、状況を裏付けるエビデンスが不足していた
- 見守り体制を強化したくても、人手不足により、これ以上職員に負担をかけることができなかった
導入効果
- 導入から3カ月で訪室回数が平均25%、転倒・転落事故の件数が約45%減少
- カメラの録画映像を活用して訪室の必要性を判断し、接触機会を最小限に抑えることで、感染症対策にも寄与
- 転倒事故発生時には、録画映像を用いてご家族への説明や事故の検証を実施
今後の展望
- 職員が安心して業務に取り組める環境を整えるため、カメラの増設を段階的に進めていく
導入前の課題
エビデンス不足解消のための見守りシステム導入
見守りシステムの導入を検討し始めたきっかけは、転倒・転落事故が発生した際に、状況を裏付けるエビデンスが不足していると感じたためです。 見守り体制を強化したいという思いはありましたが、職員は人手不足の中で業務を行っており、これ以上の負担を強いることはできませんでした。
エビデンス不足を解消するためには、カメラによる見守りが必要不可欠と考えましたが、当施設では全居室への設置は必ずしも必要ではないと判断しました。 そこで、荷重センサーによる見守りに加え、必要な数だけカメラを導入できる「見守りライフ」の導入を決めました。 しかしながら、全居室に見守りライフを導入するには相応のコストがかかります。幸いにも、当施設は公益社団法人JKAの補助事業に採択され、スムーズな導入を実現することができました。
導入効果
訪室削減と感染症発生の際の見守り業務の効率化
これまでは8台のセンサーベッドを用いて利用者様の見守りを行っていましたが、見守りライフを全床に導入したことで、全ての利用者様の状態を遠隔で把握できるようになりました。
見守りライフは、通知タイミングを4段階で設定できる上に、反応速度と精度が高く、転倒・転落事故の防止に役立つシステムです。 見守りライフを導入するまでは、職員は事故を起こしてはいけない一心で、特に転倒リスクの高い利用者様の居室を頻繁に訪室していました。 導入後は見守りライフからの通知があった際に訪室する運用に変えたことで、導入前の年度と比較して、夜間の訪室回数は導入後3カ月で平均25%、転倒・転落事故の件数は約45%も減少しました。
また、動きの多い利用者様には荷重センサーに加えてカメラも設置しています。 施設内で感染症が発生した際には、録画映像で利用者様の様子を確認した上で訪室の必要性を判断し、利用者様と職員の接触を最小限に抑えることで、感染拡大の防止にもつなげることができました。

職員を守るための「カメラ」
利用者様が急変し亡くなられた際に、カメラが有効に活用された事例があります。 警察に録画映像を提示しながら、急変が窒息によるものではないことを説明することで、施設側に過失がなかったことを証明できました。 もし録画映像がなければ、施設側の責任を問われる可能性もあり、録画映像の有無でその後の対応は天と地ほどの差があります。
また、見守りライフからの通知は受信していたものの、職員が別の利用者様の介助中で訪室が間に合わず、転倒事故が発生してしまった事例もあります。 事故自体は防げなかったものの、録画映像により状況の確認やご家族への説明がスムーズに行えました。 さらに、録画映像をもとに事故原因を分析し、再発防止策の立案にもつなげることができました。
今後の展望
職員が安心・安全に働ける環境整備
見守りライフの導入により多くの効果が得られた一方で、人手不足が原因でどうしても防ぎきれない事故が発生することもあります。 そうした場面では、カメラの録画映像があることで、ご家族や医師に対して詳細な状況説明が可能となります。
これまで事故の全ての原因が施設側にあると疑われ、ご家族から厳しいお言葉をいただくこともあり、悔しく悲しい想いもしてきました。 そうした経験から、万が一の事故が発生した際に、カメラは正しく業務を遂行した職員を守る大切なツールであると強く感じています。 今すぐに全居室にカメラを設置することはコスト面で難しいものの、今後は少しずつ増設進めていきたいと考えています。 見守りライフの導入目的の1つである「職員が安心・安全かつ負担なく働ける環境づくり」を実現するためにも、今後もこのシステムを有効に活用していきます。